超対称性の最初の例
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Advanced Description
シンプルな超対称性理論の導入
ここでは、超対称性理論を理解するための最も基本的な例を取り上げます。このモデルには次の2つの場が含まれています:
複素スカラー場 $ \phi $
2成分ワイルフェルミオン $ \psi_\alpha $
作用(Action)は次のように表されます:
$$ S = \int \dd[4]{x} \mathcal{L} $$
この表式の $\mathcal{L}$ はラグランジアン(密度)といい、この理論のラグランジアンは次のように表されます:
$$ \mathcal{L} = \partial _ {\mu} \phi^{\dagger} \partial^{\mu} \phi - i \psi \sigma^{\mu} \partial _ {\mu} \bar{\psi} - \left| \pdv{W}{\phi} \right|^{2} - \frac{1}{2} \pdv[2]{W}{\phi} \psi \psi - \frac{1}{2} \pdv[2]{W^{\dagger}}{(\phi^{\dagger})} \bar{\psi} \bar{\psi} $$
これは $d = 3 + 1$ 次元における最も単純な超対称性理論であり、Wess–Zuminoモデルと呼ばれます。
各項の解説
1. スカラー場の運動項:$\partial _ {\mu} \phi^{\dagger} \partial ^ {\mu} \phi$
$\phi$ は複素スカラー場で、$\phi^{\dagger}$ はその共役場(エルミート共役)です。
$\partial _ {\mu} \phi^{\dagger}$ と $\partial^{\mu} \phi$ はスカラー場の時空座標に対する偏微分を表しています。
この項はスカラー場が時空を通じてどう変化するか、つまり運動エネルギーを記述します。
2. フェルミオン場の運動項:$-i \psi \sigma ^ {\mu} \partial _ {\mu} \bar{\psi}$
$\psi$ はワイルフェルミオン(2成分スピノル場)、$\bar{\psi}$ はその共役場です。
$\sigma^{\mu}$ は以下のように構成される4成分ベクトル: $$\sigma^{\mu} = (I _ {2}, \sigma^{i})$$ ここで、$\sigma^{i}$ はパウリ行列です。
この項はフェルミオン場の運動エネルギーを記述し、場の動きにローレンツ対称性を反映させる重要な役割を果たします。
3. スカラー場ポテンシャル:$-\left| \pdv{W}{\phi} \right|^2$
$W(\phi)$ はスーパーポテンシャルで、この関数が理論の相互作用を規定します。
$\pdv{W}{\phi}$ はスーパーポテンシャルの微分で、 $\phi$ の変化に対して $W$ がどのくらい変化するかを表しています。
この項はスカラー場のポテンシャルエネルギーなので次のように書くこともできます。 $$V(\phi) = \left| \pdv{W}{\phi} \right|^{2}$$
この項がスカラー場のエネルギー分布を支配します。
4. 相互作用項:$-\frac{1}{2} \pdv[2]{W}{\phi} \psi \psi$
$\pdv[2]{W}{\phi}$ はスーパーポテンシャルの2階微分です。
この項はスカラー場 $ \phi $ とフェルミオン場 $ \psi $ の間の相互作用を記述します。
スーパーポテンシャルがフェルミオン間の結合強度や性質を支配していることを示しています。
5. 相互作用項: $- \frac{1}{2} \pdv[2]{W^{\dagger}}{(\phi^{\dagger})} \bar{\psi} \bar{\psi}$
$\pdv[2]{W^{\dagger}}{(\phi^{\dagger})}$ は共役場に対するスーパーポテンシャルの2階微分です。
この項は $\bar{\psi}$ フェルミオン場の間の相互作用を記述します。
構成要素の基本的な説明
スーパーポテンシャルとその役割
まずこの理論の中心にあるのが「スーパーポテンシャル」です。これは場の振る舞いを統一的に記述する非常に便利な関数で、スカラー場のポテンシャルやフェルミオンとの結びつきをすべて決めるものです。具体的には以下のような関係があります:
スカラー場のポテンシャル $V(\phi)$ の構成
スーパーポテンシャルの微分を用いて、スカラー場のポテンシャルが決定されます: $$ V(\phi) = \left| W'(\phi) \right|^{2} $$ この関数の形状により、スカラー場がどのようにエネルギーを持つかが記述されます。スカラー場とフェルミオン間の相互作用
スカラー場 $\phi$ とワイルフェルミオン $\psi _ {\alpha}$ の間には「Yukawa型の相互作用」が現れます。これは次のように表されます: $$ \phi \psi \psi $$ この項がスーパーポテンシャルから導かれ、粒子間の力の伝達や相互作用を記述します。
「正則性(holomorphic)」について
スーパーポテンシャルが「正則」であるという条件は少し抽象的ですが、これは数学的な性質を指します。具体的には、スーパーポテンシャル $W(\phi)$ が次の条件を満たす必要があります:
複素共役場 $\phi^{\dagger}$ には依存しない
スーパーポテンシャルは、場 $\phi$ のみを使った関数でなければなりません。つまり、$\phi^{\dagger}$($\phi$ の複素共役)を含んではいけないという制約があります。
これにより、スーパーポテンシャルは非常に単純かつ解析的な形を保ちます。また、この条件を満たすことで、量子補正(高エネルギーでの微妙な変化)が扱いやすくなるのです。この正則性は、超対称性理論の整合性や計算の簡便さを保証する重要な要素です。今のところは、正則性が要請されることを認めて先に進みましょう。
くりこみ可能性
「くりこみ可能」というのは、理論が高エネルギー状態でも数学的に矛盾なく計算可能であることを意味します。この条件を満たすために、スーパーポテンシャル $W(\phi)$ は3次以下の形に制限されます:
$$ W(\phi) = \frac{1}{2} m \phi^{2} + \frac{1}{3} \lambda \phi^{3} $$
この形にすると、スカラー場ポテンシャルは次のようになります: $$ V(\phi) = \left| m \phi + \lambda \phi^{2} \right|^{2} $$
このスカラーポテンシャルから、相互作用項(Yukawa型)が導かれます。理論が簡潔かつまとまりのある形になりました。
まとめ
スーパーポテンシャルは、この超対称性理論の動力学や相互作用を一括して記述する中心的な役割を果たします。その正則性は理論の整合性を支え、くりこみ可能性は計算を安定させます。また、相互作用項はスカラー場とフェルミオンの結びつきを表し、粒子の間で力を伝える仕組みを明確にします。この簡潔な理論構造が、超対称性の強力な特徴であると言えます。

