大学物理

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超対称性の特徴

  1. 場の量子論 - 3. 発展編 - 1. 超対称性 - 2. 中級 - 1. 導入 - 6. 超対称性の特徴

Advanced Description

質量項に見える超対称性

超対称性場の理論において、作用に記述されたボソン場 $ \phi $ とフェルミオン場 $ \psi $ の質量が同一であるという点、そしてその背景にある対称性――すなわち初めて導入される超対称変換――について説明します。

質量項について

$d = 3 + 1$ 次元における最も単純な超対称性理論、Wess–Zuminoモデルを取り上げていました。くりこみ可能な理論にするために、スーパーポテンシャルは項数を制限して

$$ W(\phi) = \frac{1}{2} m \phi ^ {2} + \frac{1}{3} \lambda \phi ^ {3} $$

のように書かれました。この形の場合、Wess–Zuminoモデルのラグランジアンの表式は、

$$ \begin{aligned} \mathcal{L} & = \partial _ {\mu} \phi^{\dagger} \partial^{\mu} \phi - i \psi \sigma^{\mu} \partial _ {\mu} \bar{\psi} - \left| \pdv{W}{\phi} \right|^{2} - \frac{1}{2} \pdv[2]{W}{\phi} \psi \psi - \frac{1}{2} \pdv[2]{W^{\dagger}}{(\phi^{\dagger})} \bar{\psi} \bar{\psi} \\ & = \partial _ {\mu} \phi^{\dagger} \partial ^ {\mu} \phi - i \psi \sigma ^ {\mu} \partial _ {\mu} \bar{\psi} - \left| m\phi + \lambda\phi^{2} \right|^{2} - \frac{1}{2} (m + 2\lambda\phi) \psi \psi - \frac{1}{2} (m^{\ast} + 2\lambda^{\ast}\phi^{\dagger}) \bar{\psi} \bar{\psi} \end{aligned} $$

となります。

1.ボソンの質量項

質量項はボソン場に対する二次項であり、複素スカラー場の質量項は $-m^{2}\phi^{\dagger}\phi \subset \mathcal{L}$ でした。 $\mathcal{L}\supset\abs{m\phi}^{2}=\abs{m}^{2}\phi^{\dagger}\phi$ より、ボソンの質量二乗が $ |m|^2 $ であることがわかります。

2.フェルミオンの質量項

ワイルフェルミオンの質量項は $-\frac{1}{2}m\qty(\psi\psi+\bar{\psi}\bar{\psi})$ でした。 $\mathcal{L}\supset - \frac{1}{2}m\psi\psi - \frac{1}{2}m^{\ast}\bar{\psi}\bar{\psi}$ より、これはフェルミオンの質量も $ |m| $ となることを意味します。

超対称性による質量の等価性

ここで注目すべきは、上記のボソンの質量項とフェルミオンの質量項が、どちらも同じパラメータ $ m $(すなわちその大きさ $ |m| $)に依存している点です。超対称性の対称変換則により、ボソン場 $ \phi $ とフェルミオン場 $ \psi $ は互いに関連付けられており、量子補正などを含む完全な量子論においても、その質量の等価性が保護されます。通常の量子場理論では、ループ効果により質量が変化する可能性がありますが、超対称性はその特殊な対称性により、ボソンとフェルミオン間の質量の一致(ここでは $ |m| $ )を維持するのです。

まとめ

  • ボソンの質量項は、ポテンシャル $ V(\phi) = \left| \pdv{W}{\phi} \right|^2 $ の中の $ \left| m \phi \right|^2 $ 項から読み取れ、ボソンの質量二乗が $ |m|^2 $ であることを示します。

  • フェルミオンの質量項は、作用の $ -\frac{1}{2} \pdv[2]{W}{\phi} \psi \psi $ の部分から、$\pdv[2]{W}{\phi} \approx m$ とおくことで、フェルミオンの質量も $ |m| $ であることがわかります。

このように、超対称性が成立している理論では、スーパーポテンシャルによってボソンとフェルミオンの質量が同じパラメータ $ m $ によって決められており、この対称性が量子修正をも含めて質量の等価性を保護する主要なメカニズムとなっています。

通常の量子場理論では、ラグランジアン中の質量パラメータは量子補正(ループ補正)を受け、物理的な質量はその補正によりずれる可能性があります。にもかかわらず、この特定の理論では、量子補正をすべて含めた完全な量子論においても、ボソンとフェルミオンの質量が等しく保たれるという特異な結果が得られます。

質量の等価性を守る超対称性

この質量の等価性が成立する理由は、作用が非常に驚くべき対称性を有しているためです。その対称性は以下の微小変分に対する不変性で示されます。この対称性を確かめるには、複雑な計算をする準備が必要になるので今は確かめません。

超対称変換則

  • ボソン場 $ \phi $ の変分は
    $$ \delta \phi = \sqrt{2} \, \epsilon \, \psi $$

  • フェルミオン場 $ \psi $ の変分は
    $$ \delta \psi = \sqrt{2} \, i \, \sigma ^ {\mu} \, \bar{\epsilon} \, \partial _ {\mu} \phi \, - \, \sqrt{2} \, \epsilon \, \frac{\partial W^{\dagger}}{\partial \phi^{\dagger}} $$

ここで注意すべき点は以下の通りです:

  • 超対称性変換の意味:
    これらの式は、超対称性変換がボソン場 $ \phi $ とフェルミオン場 $ \psi $ を互いに結びつける対称運動であることを示しています。つまり、この対称変換により、両者の性質(ここでは質量)が一致する保護機構が働いているのです。

  • 微小量(変換パラメータ) $\epsilon$ の性質:
    フェルミオン場 $ \psi $ は Grassmann 変数(反交換な数)であるため、微小量(変換パラメータ) $\epsilon$ も Grassmann 値をもつワイルスピノルとなります。これにより、変換そのものが反交換性という性質を持ち、通常のボソンを考える場合とは異なる振る舞いを示します。

  • スーパーポテンシャルの寄与:
    変換則の右辺後半の項 $ - \sqrt{2} \, \epsilon \, \frac{\partial W^{\dagger}}{\partial \phi^{\dagger}} $ は、スーパーポテンシャル $ W(\phi) $ の共役部分から出る項です。これにより、超対称変換はスーパーポテンシャルを通じた相互作用項にも影響を与え、全体として対称性が保たれる仕組みとなっています。

この超対称性の意義

この変換則は、最初の超対称性の例です。具体的には、ボソン($ \phi $)とフェルミオン($ \psi $)という、通常は全く異なる種類の粒子が、ある対称性変換によって統一的に扱われるという点です。その結果、量子補正をしっかりと考慮しても、ボソンとフェルミオンの物理的質量が一致するという非常に制約の強い性質が生まれます。

まとめ

超対称性場の理論においてラグランジアン内でのボソンとフェルミオンの質量の等価性が、単なる偶然ではなく超対称変換という深い対称性によって保護されていることを示しています。この対称性の重要な特徴は、変換パラメータ $\epsilon$ が Grassmann 値を持ち、ボソン場とフェルミオン場を相互に結びつける点にあります。これにより、量子補正によるズレが打ち消され、理論全体として一貫性のある質量等価性が実現されます。

超対称性の理解に向けて

見た目からは分からない超対称性の不変性が、実は非常に微妙で複雑な計算を要します。また、この作用 $S$ は4次元 $( d = 3+1 )$ で最も単純な超対称性理論、すなわちWess–Zuminoモデルです。

わかりにくい対称性

作用 $S$ をただ眺めただけでは、その式が超対称変換に対して不変である(変換しても同じ形を保つ)ことは見抜くことは難しいでしょう。つまり、表面的な形からでは不変性が明らかにならず、実際に計算を行って初めて、その作用が超対称性という深い対称性によって保護されていることが確認できるのです。

しかし、この計算は決して簡単ではなく、複雑な演算や項の整理を要するため、しばしば頭を悩ませるものとなります。なお、この煩雑さは学んでいくとある程度解消されることになります。

Wess–Zuminoモデル

この作用 $S$ は、4次元時空 $(d = 3+1)$ における最も基本的な超対称性理論であり、Wess–Zuminoモデルと呼ばれます。

Wess–Zuminoモデルは、

  • スカラー場

  • フェルミオン場

という2種類の場を含み、両者の間の相互作用や運動項が、ひとつのスーパーポテンシャルによって一元的に決定されるシンプルな枠組みです。

超対称性の存在が提起する疑問

この対称性の存在は、ただ単に奇妙な数学的現象というだけでなく、次のような多くの重要な疑問を生み出します。

  • 超対称性は実際に何のために存在するのか?
    その対称性は、理論上の調和や量子補正のキャンセル、または粒子の性質(例えば、ボソンとフェルミオンの質量の一致)を保護するために非常に有用です。

  • 同様の超対称性を示す他の理論は存在するのか?
    Wess–Zuminoモデルは一例ですが、より複雑なゲージ理論や重力を含む超対称理論も存在します。

  • それらの理論はどんな性質や物理的な暗示を持つのか?
    これらの疑問は、例えば、階層問題、ダークマター候補の出現、ゲージ結合の統一などの現象や問題に関連しています。

超対称性の再構築へ

ここまでWess–Zuminoモデルを通して超対称性の概要と特徴を説明してきました。ここでは、それを振り返りつつこの後の方向性について説明します。

ラグランジアン形式と対称性の特徴

場の量子論のラグランジアンは、ハミルトニアン形式と比べて対称性が添え字の縮約などから簡単にわかるものです。例えば、ローレンツ対称性やゲージ対称性は、式中の添え字の配置を見ることで、容易にその対称性が現れていると判断できます。しかし、超対称性の場合は状況が異なります。

超対称性の概要

超対称性は、ボソン場 $ \phi $ とフェルミオン場 $ \psi $ といった本質的に異なる性質の場を結びつける対称性です。超対称性の変換は複数の項が絡み合い、ボソンとフェルミオン間の相互作用や微妙な補正項が存在しているため、不変性の確認は容易ではありません。実際、この不変性を示すための計算はかなり込み入っていて、「頭痛の種」とも言われています(これから学んでいきながら緩和策を提示します)。

Wess–Zuminoモデルの導入

ここで取り上げている作用は、 $d = 3 + 1$次元における最も単純な超対称性理論、すなわちWess–Zuminoモデルです。このモデルは、超対称性の構造や、その結果として得られる物理的性質(例えば、ボソンとフェルミオンの質量等価性)がどのようにして保たれているのかを考察するための出発点となります。そして、この超対称性の存在は、単なる数学的な手遊びだけではなく、自然界の深い部分における統一性や、様々な理論間の関係性を探るための重要な手がかりとなる可能性を秘めています。

今後の方向性

このような背景から、まずは超対称作用をより直観的に理解できる形で書き換え、超対称性が他の対称性と同様に明白に現れるようにする方法を模索することになります。これは、超対称性理論全体の構造を解明する重要な一歩となるのです。