大学物理

様々なトピックをひとつひとつ数式で

7.1.4.2 対称性の組み合わせ

Simple Description

CP対称性の破れ

弱い力では $C$ 対称性と $P$ 対称性が同時に破れているため,これを組み合わせた $CP$ 変換の対称性について考える.

中性Kメソンの基底

中性 $K$ メソンは $\ket{K^{0}}=d\overline{s}$ とその反粒子 $\ket{\overline{K^{0}}}$ の重ね合わせであり,これらは擬スカラー $0^{-}$ であるから $$\begin{cases} CP\ket{K^{0}}=-\ket{\overline{K^{0}}} \\ CP\ket{\overline{K^{0}}}=-\ket{K^{0}} \end{cases}\implies \begin{cases} CP\ket{K _ {S}}=+\ket{K _ {S}} \\ CP\ket{K _ {L}}=-\ket{K _ {L}} \end{cases}$$ のように基底を $CP$ の固有状態にとることができる. $$\mqty(\ket{K _ {S}} \\ \ket{K _ {L}})=R\qty(-\frac{\pi}{4})\mqty(\ket{K^{0}} \\ \ket{\overline{K^{0}}})\qc R\qty(-\frac{\pi}{4})=\mqty(\cos{\frac{\pi}{4}} & -\sin{\frac{\pi}{4}} \\ \sin{\frac{\pi}{4}} & \cos{\frac{\pi}{4}})$$

崩壊とCP対称性

$CP$ が保存するなら $\ket{K _ {S}}$ は $2\pi$ メソン $\qty(C=+1,\ P=+1)$ , $\ket{K _ {L}}$ は $3\pi$ メソン $\qty(C=+1,\ P=-1)$ に崩壊する.崩壊後の質量が大きい $K _ {L}$ は長寿命(Long)で,逆に $K _ {S}$ は短寿命(Short)である.

CP対称性の破れ

実験では $K _ {L}$ が $3\pi$ メソンに崩壊する事象も観測された. $2\pi$ メソンに崩壊する $K _ {2}$ と $3\pi$ メソンに崩壊する $K _ {3}$ という状態があるとすると $$\ket{K _ {L}}=\frac{\varepsilon\ket{K _ {2}}+\ket{K _ {3}}}{\sqrt{1+\abs{\varepsilon^{2}}}}\qc\varepsilon\simeq2.3\times10^{-3}$$ のように重ね合わせられており,弱い力では非常に小さく $CP$ 対称性が破れている.

$CPT$ 定理

時間反転 $T$ という変換により,時間の流れと逆向きに時間発展する $\ket{\psi'}=T\ket{\psi}$ を考える.

非線形性

$T(\alpha\ket{\psi}+\beta\ket{\phi})=\alpha^{\ast}\ket{\psi'}+\beta\ket{\phi'}$ と,係数が複素共役になる.

反ユニタリ性

$\ip{T\psi}{T\phi}=\ip{\phi}{\psi}$ と,内積が複素共役になる.したがって複素共役をとる演算子 $K\psi=\psi^{\ast}$ とユニタリ演算子 $U$ で $T=UK$ と書ける.

ハミルトニアン

$\comm{T}{H}=0$ なら $i\hbar\pdv{t}\ket{\psi}=H\ket{\psi}$ に対し $T\ket{\psi}$ も解である.

$CPT$ 対称性

粒子を反粒子に置き換え,運動量を逆にし,時間を反転させる $CPT$ 変換に対する不変性は,特殊相対論にしたがう場の量子論では必ず成立する.したがって強い力や電磁気力は $T$ 対称性が破れておらず,弱い力に対しては $T$ 対称性が破れているはずである.

特殊相対性理論を満たすなら以下のローレンツ変換で理論が不変である. $${\Lambda^{\mu}} _ {\nu}=\eval{\mqty(\cosh{\theta} & -\sinh{\theta} \\ -\sinh{\theta} & \cosh{\theta} \\ & & 1 \\ & & & 1)} _ {\phi=i\pi}=\mqty(\dmat{-1,-1,1,1})$$ これは $PT$ 変換.荷電粒子の場合は $CPT$ 変換に対して不変であることが数学的に示されている.

Basic Problems

対称性の破れ

問題 強い力,電磁気力,弱い力のうち, $C$,$P$,$T$ とこれらを組み合わせた対称性を破るものがあれば,その力と破られている対称性を答えよ.

解答例

弱い力は $C$,$P$,$T$,$CP$,$PT$,$CT$ の対称性を破っている.

Standard Problems

時間反転

問題 シュレディンガー方程式 $i\hbar\pdv{t}\psi(\vb*{x},t)=H\psi(\vb*{x},t)$ で $T\psi(\vb*{x},t)=\psi^{\ast}(\vb*{x},-t)$ も解であることを示せ.これにより $T$ の非線形性と反ユニタリ性を示せ.

解答例

シュレディンガー方程式で $t\to-t$ として両辺複素共役をとると $$i\hbar\pdv{t}\psi^{\ast}(\vb*{x},t)=H\psi^{\ast}(\vb*{x},t)$$ より $T\psi(\vb*{x},-t)$ も解.よって $$\begin{aligned} T\qty(\alpha\psi+\beta\phi) & =\alpha^{\ast}T\psi+\beta^{\ast}T\phi \\ \qty(T\psi(t),T\phi(t) ) & =\int\dd{^{3}\vb*{x}}\qty(\psi^{\ast}(\vb*{x},-t) )^{\ast}\phi^{\ast}(\vb*{x},-t)=\qty(\phi(-t),\psi(-t) ) \end{aligned}$$