1.1 電子軌道と化学結合
原子に束縛された電子の軌道は
$1s$,$2s$,$2p$,$3s$,$3p$,$3d$,$4s$,$4p$,$4d$,$4f$,$\ldots$
のように表す.数字は主量子数 $n=1,2,\ldots$ ,記号
$s$,$p$,$d$,$f$,$\ldots$ は軌道角運動量 $l=0,1,\ldots$
を表している.これに加えて磁気量子数 $m=-l,\ldots,l$
で特徴づけられる各状態を,スピンの異なる2個の電子が占有していく(Pauliの排他原理). 水素原子のエネルギー準位は $3d$,$4s$ の順であるが,多電子原子の場合は
$4s$,$3d$
の順に軌道が占められていく.これは中心力ポテンシャルを他の電子が遮蔽することによりエネルギー準位が下がるからであり,比較的遮蔽効果を受けにくい
$s$ 軌道の方がエネルギー準位が高くなってしまうからである. 離れていた原子を近づけていくと原子同士の相互作用でエネルギー準位が分裂する.多くの原子を集めればエネルギー準位が連続的になりエネルギーバンドを形成する. 結合に寄与する電子軌道の重なりが小さい内殻においては,電子は自由電子とほとんど同じように振る舞う.最外殻の準位は大きく分裂し価電子帯(バレンスバンド)を形成する.エネルギー準位が広がることで全エネルギーを低くとれるから安定する.これが化学結合である. 結合のタイプを決める電子の波動関数が,多数の原子間ではなく最近接の2原子間のみで重なる場合は,原子間距離だけでなく結合の角度にも結合強度が依存するので方向性結合や共有結合と呼ばれる. 波動関数が最近接原子間距離に比べて大きいときは,多くの原子との重なろうとするため充填密度が高くなり,結合の方向性がない金属結合になる. イオン結合は方向性をもたず波動関数の広がりが小さい結合様式で,異種の原子間で電子を移すことで大きくエネルギーが減少して安定する場合に実現される.
原子の電子軌道
電子軌道の占有
遮蔽効果
結合後のエネルギー準位
エネルギー準位の分裂
価電子帯の形成
結合の種類
共有結合
金属結合
イオン結合

