大学で学ぶ程度の物性物理を端的明快に説明する物性物理学シリーズ.第2章では,前章で解説した化学結合によって形成される「結晶構造」を解説します.今回はその初回として,結晶の本質的要素である結晶格子を扱います.
前回の記事はコチラ.
2次元結晶格子
一般に2次元格子の任意の格子点は,基底ベクトル(結晶軸) $\vb*{a}$,$\vb*{b}$ に対して $\vb*{r} _ {n}=n _ {1}\vb*{a}+n _ {2}\vb*{b}$ $\qty(n _ {1}, n _ {2}\in\mathbb{Z})$ で指定される.
2次元結晶
この平行四辺形格子の各点を1個の原子が占めれば平面結晶構造となり, $\vb*{a}$,$\vb*{b}$ を辺とする単位胞あたり原子1個が含まれるなら単純胞という.
2次元格子の分類
ベクトル長 $a$,$b$ やベクトルのなす角 $\gamma$ によって格子を下表に示すような呼び方をする.
結晶軸 | 角 | 格子 |
---|---|---|
$a\neq b$ | $\gamma\neq{90}^{\circ}$ | 平行四辺形格子 |
$a\neq b$ | $\gamma={90}^{\circ}$ | 長方格子 |
$a=b$ | $\gamma=SI{90}^{\circ}$ | 正方格子 |
$a=b$ | $\gamma={60}^{\circ}$ | 六方格子 |
$a=b$ | $\gamma\neq{90}^{\circ}$ | (結晶軸を変更して)面心長方格子 |
面心格子
$a=b,\ \forall\gamma$ のとき, $\exists a,b,\ \gamma={90}^{\circ}$ の長方格子の中心に格子点を置いた面心長方格子としてみることができ,直交座標系を使えるので便利である.正方格子,平行四辺形格子,六方格子での面心構造は,より小さな正方格子,平行四辺形格子,長方格子をとった方が簡便である.
基底ベクトル系
表1に示したように対称性により分類された $\vb*{a}$,$\vb*{b}$ を独立な基底ベクトル系といい,2次元格子では5つだが3次元格子では7つあり,単純(P)以外に底心(C),体心(I),面心(F)を考えた方が便利な場合を含めると14個のブラベー格子がある.結晶系の名称を下表に挙げる.
結晶軸 | 角 | 結晶系 | 中心構造 |
---|---|---|---|
$a\neq b\neq c\neq a$ | $\alpha, \beta, \gamma\neq{90}^{\circ}$ | 三斜晶系 | P |
$a\neq b\neq c\neq a$ | $\alpha, \gamma={90}^{\circ}\neq\beta$ | 単斜晶系 | P, C |
$a\neq b\neq c\neq a$ | $\alpha, \beta, \gamma={90}^{\circ}$ | 斜方晶系 | P, C, I, F |
$a=b\neq c$ | $\alpha, \beta, \gamma={90}^{\circ}$ | 正方晶系 | P, I |
$a=b\neq c$ | $\alpha=\beta={90}^{\circ},\ \gamma={120}^{\circ}$ | 六方晶系 | P |
$a=b=c$ | $\alpha=\beta=\gamma\neq{90}^{\circ}$ | 菱面体晶系 | P |
$a=b=c$ | $\alpha=\beta=\gamma={90}^{\circ}$ | 立方晶系 | P, I, F |
ご意見やご感想をお待ちしています.次回も物性物理学シリーズをお送りしますのでお楽しみに!