1.4 その他の結合
共有結合では核間の電子密度の最大化の要請が支配的であったが,金属結合では不確定性原理
$\varDelta{x}\varDelta{p}\sim\hbar$
の制限の中で運動エネルギーを低くするという要請が支配的である.これにより電子の波動関数が方向性を持たずに広がって結晶全体を塗りつぶしつつ,核間のクーロン反発を強く遮蔽している. $s$,$p$ 電子軌道(と $d$
電子軌道)が多数重なることで準連続的な価電子バンドをつくり,微小なエネルギーでも受け取ることができるため,電気伝導性や熱伝導性に優れる. アルカリ金属: 最外殻の $s$
軌道に1個しか電子が入っておらず金属となる. アルカリ土類金属: $s$ 軌道と $p$ 軌道がエネルギー的に重なるため
$sp$ 合成バンドを形成して金属となる. 遷移金属: 広い $sp$ 合成バンドをつくるが, $d$
バンドは1個の原子付近に局在して他の原子との重なりが少なく,共有結合的でバンド幅が狭い. 一般に水素結合は多様な現象が含まれるが,基本的なメカニズムは次のように説明できる.1個の水素原子が電気陰性度の高い原子と共有結合するとき,ほぼ完全に電子がその原子に移ってしまう.その結果,残された陽子は陰性な原子を引き付けることができる. 陽子は引き付けた陰性原子の電子雲で埋もれて,別の原子が結合に割り込むことがないためこの結合は2配位となる.これは特に陽子を挟んで対称に同じ原子に結合している場合である. 単に引き付けられるだけで異なる原子が非対称に水素結合する場合もある.この場合はファン・デル・ワールス結合のみがあるとして予測した値に比べて,原子間距離の実測値が小さい場合に水素結合があると判断される. 結合エネルギーはおよそ ${0.1}\mathrm{eV}$
である.2本のDNA鎖を結びつけ遺伝子の再生で大きな役割を果たしていたり,氷の結晶構造や,
${4}^{\circ}\mathrm{C}$
以下の水において錯体を形成する役割を果たしており,体積が
${4}^{\circ}\mathrm{C}$
の水より大きくなるという効果をもたらしたりしている. どの固体にも存在するが,他の結合様式が不可能な場合に表面化する結合である.原子内の電荷が零点運動で揺らぐことで生ずる電気双極子モーメント間の引力であり,たいていは
${0.1}\mathrm{eV}$ 程度の大きさで,比較的結合半径が大きい. 電気双極子モーメント $p _ {1}$ による $E\propto\frac{p _ {1}}{r^{3}}$
の電場中で,分極率 $\alpha$ の原子は電気双極子モーメント
$p _ {2}\sim\frac{\alpha p _ {1}}{r^{3}}$
を誘起する.これによりポテンシャル $-p _ {2}E\propto r^{-6}$
の引力を生じる.
金属結合
金属結合と共有結合
多数の軌道の重なり
水素結合
基本的なメカニズム
結合の配位数
結合の有無の判断
水素結合の効果
ファン・デル・ワールス結合
基本的性質
ポテンシャル形状

