大学物理

様々なトピックをひとつひとつ数式で

2.2 結晶の対称性

大学で学ぶ程度の物性物理を端的明快に説明する物性物理学シリーズ.第2章では,前章で解説した化学結合によって形成される「結晶構造」を解説します.今回はその第2回.前回解説した結晶格子を特徴づける第一歩として結晶の対称性を解説します.

前回の記事はコチラ.

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鏡映対称性

例えば $yz$ 面に関する鏡映対称性を $(x',y',z')=(-x,y,z)$ の座標変換に対する不変性として表せる.国際記号(ヘルマン-モーガン記号)は $m$ である.水分子や等核2原子分子などはすべての原子を含む面と酸素原子を通る分子の二等分面の2つの鏡映面をもつ.

反転対称性

反転対称性は座標変換 $(x',y',z')=(-x,-y,-z)$ に対する不変性であり1点に対する反射として捉えることもできる.記号は $\bar{1}$ である.シクロヘキサンや等核2原子分子などは分子の中心に反転中心をもつ.

回転対称性

ある軸周りに $2\pi$ 回転する過程で元の構造とぴったり重なる回数 $n$ をその回転軸の次数といい,その軸を $n$ 回軸と呼ぶ. $n=2, 3, 4, 6$ は180°,120°,90°,60°回転対称性に対応する.厳密に周期的な結晶では2,3,4,6回軸のみもつことが可能で,これ以外は並進対称性と両立しない.微小固体凝集体では5回軸,単一分子なら5回軸のほかに7回軸をもつことも可能である.記号は $2$,$3$,$4$,$5$,$6$,$7$ のように次数で表す.

回反軸について

回転と反転を組み合わせたもの.記号は $\bar{2}=2+\bar{1}$,$\bar{3}=3+\bar{1}$,$\bar{4}=4+\bar{1}$,$\bar{6}=6+\bar{1}=3+m$ のように数字の上にバーを付けて表す.


ご意見やご感想をお待ちしています.次回も物性物理学シリーズをお送りしますのでお楽しみに!