大学物理

様々なトピックをひとつひとつ数式で

2.3 結晶群(点群)

大学で学ぶ程度の物性物理を端的明快に説明する物性物理学シリーズ.第2章では,前章で解説した化学結合によって形成される「結晶構造」を解説します.今回はその第3回.前回解説した結晶の対称性を数学的に取り扱う枠組みとして,結晶群(点群)を解説します.

前回の記事はコチラ. univ-phys.hateblo.jp

群構造

任意の結晶を点群で表せる.対称操作を要素として

  • 完備性 $A\otimes B=C$

  • 結合則 $A\otimes(B\otimes C)=(A\otimes B)\otimes C$

  • 単位元 $E=(\text{360°回転})$ の存在

  • 逆元 $A^{-1}$ s.t. $A^{-1}\otimes A=E$ の存在

を満たす32個の結晶点群が存在し,並進対称性を入れれば230個の空間群が得られる1

点群の表記法

ステレオ投影法

結晶を貫く最も対称性の高い軸方向から,この軸に垂直な結晶を中心に広がる面に対して,種々の格子面の法線を投影した図で表す表記法である.結晶を中心とした円を描き,投影した法線との交点に,その法線が面の上下どちらにあるかを示す黒点か白点を付す.

国際表記(ヘルマン・モーガン記号)

結晶群に含まれる対称操作を,前節で紹介した記号で列挙する表記法で,結晶学で用いられる. $n$ 回軸に垂直な鏡映面があれば $\frac{n}{m}$ と表すが,分子を省略することがある.

シェーンフリースの記号

主回転軸や主鏡映面による分類を主記号で示し,付加記号として鏡映面を $s=h,v,d$ の下付き添え字で示す表記法で,群論や分光学で用いられる.付加記号の $h$ は水平, $v$ は垂直, $d$ は対角鏡映面を表し,それぞれ主回転軸に垂直,平行,2回軸の二等分面内の主回転軸に平行な鏡映面である.下表に記号を整理した.

主記号 意味 付加記号
$C _ {i}$ 反転中心
$C _ {n}$ $n$ 回軸 $v$,$h$
$S _ {n}$ $n$ 次回反軸
$D _ {n}$ 主 $n$ 回軸と垂直な $n$ 本の2回軸 $d$,$h$
$T$ 正四面体の4本の3回軸と3本の4回軸 $d$,$h$
$O$ 正八面体の4本の3回軸と3本の4回軸 $h$

水分子

最も対称性が高い2回軸が主回転軸で対称面は主回転軸に平行だから $C _ {2v}$ と表せる.

立方体

3本の4回軸と4本の3回軸と,4回軸に垂直な鏡映面をもつから $O _ {h}$ と表せる.


ご意見やご感想をお待ちしています.次回も物性物理学シリーズをお送りしますのでお楽しみに!


  1. 並進群は交換法則が成り立つアーベル群である.